人生

やっていきましょう

267日目

久々に知人とAge of empires Ⅱをプレーした。強化mod3体を相手に知人と自分とCPU1体で結束して戦った。2度戦うことになり、1度目は操作方法が分からず完全に敗北した。2度目は便利な機能を学習し戦略を予習したことで、どうにか勝つことができた。難易度は「難しい」だった。

知人と自分との間での初戦の行動の違いが興味深かった。自分は敵に攻め込まれた時パニックになって戦意を喪失し、人材を避難させることなくどうにか現状維持で解決できることを期待して特に策を講じなかった。また拠点が全滅したあと、運よく避難できた人材によって拠点を復興させようとしたが、その時点で既に負け筋が見えており、勝負に身が入らなかった。ボーっとして内政をただ雑に増やしていただけだった。知人に「はやく兵士を作れ」といわれるまで自分が今戦争中であるという事実を忘れていた。

一方知人はしぶとく粘り続けた。自分が早々と絶滅し、知人の拠点のすべてが失われても、画面端の方で拠点の復興をスムーズに行った。このゲームは木と食糧が安易に手に入りやすく、その資源だけで作れる攻撃ユニットがいくつかいるので、内政を復興させつつ、前線にそれらのユニットを派遣し前線を食いとどめていた。負け筋が見えているからといって、プレーを緩ませることはなかった。

自分と彼の違いは何か、ということを考えた。知人はこのゲームの熟練者で自分よりも戦場での場数を踏んでいた。だから経験の差、であると安易に言うこともできるが、自分が今回注目したのは「撤退戦」のやり方だ。ゲームは常に優位な状況にあるとは限らない。自分の拠点が攻められた時、ユニットの生産が間に合わない時、速やかにその街を撤退して新たな拠点を構築する方が得策という場合もある。

一方で自分は今ある「与えられた現状」の中で、どうにか逆転のチャンスはないかと考えていた。明らかに相手の方が兵力過剰で、防壁を突破されたら街に侵入され壊滅は避けられないという状況で、悠長に城があるからとか、今この街を捨てたらもったいない、といった考えに囚われていた。またパニックになり、やることといえば現状維持くらいしか思いつかなかった。現状維持で何とかやり過ごし、このままパニックが穏便に過ぎ去るのを待っていた。パニックの結果拠点は崩壊し、次の立て直しをすればいいのだが、負け筋しか見えないという喪失感の中で、申し訳程度の復興に着手して自分を慰めているうちに敵の強大な兵力に圧倒されあっけなく滅んでしまった。

これは自分の人生だ、とプレーをしながら思った。人生は有利な状況ばかりでなく不利な状況もある。その時に不利な状況に陥る前の生活にこだわりつづけ、目の前の現状を受け入れられずパニックになっているのが自分だ。だがそうではなく、不利な状況下では不利な状況下なりのやり方というものがあるのだ。自分の持っている資源が偏っていたり枯渇している際には、その資源の中で最低限やりくりすることができる。貴重な資源によって作ることができる優れたユニットに比べれば見劣りするが、それでも無いよりは数倍マシなのであって、どうにかその中で前線を食いとどめようと努力することはできる。だが自分はそれをしなかった。早々と白旗をあげて勝負から逃げ出した。

不利な状況下における戦術というものを、自分は人生の中で行使した記憶がない。優勢になれないのであれば努力する意味などないのであり、なれないと分かると勝負を放棄する傾向にあった。だが勝負において優勢が維持されることなど滅多になく、むしろ優勢続きで不利な状況への投資が行き届いていない場合、その栄華はあっけなく崩れ落ち、今まで維持されてきた未来ある日常への喪失感ゆえに、再建することすらできないだろう(そしてかつての「古き良き時代」と現実を混同することになるのだ)。

自分は今、人生の窮地に立っており精神的に最も不安定な時期にある。自殺か生きるかという葛藤が目下行われており、失敗続きの人生に失望し何もする気が起きないでいる。だがそういう時は、知人が負け筋の濃い逆境の中で貧弱な拠点を構築し、安易に作りやすいユニットで部隊を作り前線に送り出したという事実を思い出したい。結局のところ負けてしまったが、決して無駄ではないだろうと思う。不利な状況下での立ち回りを彼は忠実にこなした。この姿勢こそ逆境に置かれている自分には求められている(それで不利な状況を押し上げた経験を何度か持っていると語った)。

余談だが2度目の戦いはあっけなかった。戦略の基本方針を大方予習しておいて、知人のチェックを受けてから本番に臨んだ。敵チームに隣接している前衛ではなく、味方に守られている後衛だったので、安心して予定通りに内政を行うことができた。これが前衛となると相手からの攻撃という予想外の事態に柔軟に対処せねばならず、たとえば内政重視の路線から急遽ユニット量産の陣形を組む必要がある。だがそういうこともなかった。

後衛は前衛が敵と衝突している前線に兵士を派遣するという役割を持っている。そこで味方をカバーすることで少しでも前衛が内政を豊かにする余地を与えることができる。だから方針を定めることが容易かった。幸い目立った前線がマップの北部、中部、南部の3本に限られており(そういうマップだったのだが)、前線に城を建て城の窓から弓矢で応戦するとともに、城から特殊ユニットを量産することでうまく攻防することができた。

結局それで簡単に勝ってしまったのだが、課題があった。後衛の割には前衛よりもユニットを量産することができなかった。つまり知人とmod強化されたCPUのパワープレイのおかげで勝ったようなものだった。これが前衛だったら負けていたかもしれない。また全体的な機動力に欠けている印象をうけた。後半になるにつれ資源が余るという状況が生まれ、その資源を別の資源に転換させる労を怠った。たとえば木が2000もある状況では、畑を量産して食糧を確保すればよかったのだが、気が付かなかったのか、面倒だったのか、何も対策を講じることができなかった。

戦略ゲームは様々な学びがある。とくにリアルタイムストラテジーは刻々と変化する状況に柔軟に対応する必要が生まれ、現実に生かせる教訓を学べることも多い。今後もこのゲームはやっていきたいし、もっとうまい立ち回りができるようになればと思う。