人生

やっていきましょう

629日目

向上心を持つことが世間で持て囃される今、何かに挑戦する人間が増え続ける一方、その分挫折を味わう人間も生まれているはずだ。にもかかわらず、そうした致命的な挫折を経験した人間というのは戯曲化されたネットの記事でしか見たことがなく、身近な人間ではあまり見かけたことがない。折れた経験や心の傷などそうそう人に見せるものではないし、当事者としては悲痛な現実を直視できず自分を誤魔化す他にないという心情も分かる。だから多くの挫折者は表に出てこない。

自分はそうした目に見えない無数の挫折者に関心がある。彼らはどのように自分の精神的な挫折と向き合っているのか。自分が無能であると知りながら、それでも自分の実力以上のレベルに挑戦してかえって状況が悪くなり、これなら背伸びなどしない方が良かったと後悔しているのか。それともストレスで正気を失いカルトや陰謀論にハマり込み、支離滅裂で過激な言説を発散することに救いを求めるようになったのか。あるいは自分自身の惨めさに耐えきれずこの世からひっそりと自ら退場しているのか。

自分は彼らのことを全く知らない。彼らは今何をして、どのように生きているのか。本当に存在しているのか。

成功者がポジショントークでたまたまうまくいったと言うだけの情報が無数に溢れる中、精神が崩れただ打ちひしがれる他にない人間のリアルは薄められる。この無力な沈黙者に自分は同情する。彼らは決して表に出てこないが、それでも確かに苦しんでいる。

自分には彼らをどうすることもできない。彼らは彼らの人生と向き合っており、その中でその人自身の解釈を行っている。それをどうこう言う権利は自分にはない。

ただ自分は彼らの言葉を求めている。彼らがそこで何を受け止め、どう行動したのか。特に、挫折から這いあがろうとする人間の覚悟の言葉を自分は聞きたい。それが自分に生きる勇気を与えてくれる。