人生

やっていきましょう

1156日目

『日本統一』というヤクザ映画をずっと追っていた。たまにabemaTVで全話無料で公開されているのでそれを機に一気に話を進めている。1話で90分前後の話が40作くらいあるので、食事時などに見ることが多い。

初めは随所に感じられる低予算感が面白くて見ていたが、話を追っていく中で段々と印象が変わってきた。

まず自分はこの作品をCivilizationVや戦記モノを楽しむような気持ちで話を見るようになってきた。侠和会という大手極道組織が先代の夢である日本統一を目指して日本各地を征服していく様は日本の大河ドラマや、Civ5やAoe2といった歴史ストラテジーゲームの舞台を思い起こさせる。

様々な勢力が群雄割拠する中でどのように勢力を伸ばしていくのか、ということが見所だった。たとえば攻め方ひとつにしても単純にはいかない。所かまわず攻めに行って武力で勢力を拡大していくだけでは周辺勢力の不審と反発を招く。実際そのような狂犬勢力が存在し、そのために周辺からは警戒されているという描写も多々見られている。だから戦争を起こすには必ず「義」を掲げているし、その義をもって征服を正当化しているという印象を覚える。

これはciv6で採用されていたシステムを思い起こさせる。他国に理由もなく攻め入る戦争には好戦的ペナルティが大きく課せられる。しかしそれが宗教戦争であったり、植民地主義といった開戦事由を有していれば戦争を起こしてもペナルティが大きく減少する。侠和会の征服を正当化するのは主人公の氷室が言うような、日本全土が侠和会の傘下に入ればつまらない喧嘩や争いを減らし秩序を生み出せるという考えである。この考えが妥当であるかどうかは別として、これが全国制覇という侠和会の戦争を正当化する理由のひとつになっている。

それとは別に征服に至るまでの過程にも見所がある。戦争が起こる前、大抵どこかの地域でもめ事の臭いを嗅ぎつけるところから始まる。跡目争いが起こった、内輪もめが起こったなど、とにかくその地域の結束が緩みそうな時を狙って各団体が探りを入れるところからはじまる。その過程で付け入る隙を見出すと、現地に足がかりをつくってそこから現地勢力と向かい合っていくようになる。

この種の映画の特筆すべき点は、他の勢力と向かい合う中で脅迫と急襲を描きやすいという点であるように思う。何かあればすぐにチャカとドスを振り回しかねないような人間ばかりがいる状況で、例えば各勢力が面と向かって交渉する。この時温和に話し合っていても、次の瞬間には銃を突きつけ発砲してもおかしくないという緊張感が常にある。また交渉がうまくまとまったとしても感情的には腑に落ちておらず、怒りに任せて兵隊に特攻させるようなシーンもある。とにかく交渉が不安定であり、話し合いではうまくまとまらないという状況が、作品全体に何ともいえない緊迫感を生み出している。

Civ5で言えば、好戦的なAIを持ったズールー族のシャカやアステカのモンテスマを相手にしているような気分になる。親しみをもって接近した次の瞬間には戦争を起こしているので、常に警戒し続けることを強いられる。

またこの映画を戦闘だけではなく、組織人として生きる苦悩を描いた作品としても見るようになった。「親が黒といったものは白いものでも黒と思わなければならない」といった言葉に現れているように、映画の極道社会は徹底した上下社会でできている。代紋の下にある者は誰であれ組織の一部であり、どんな下っ端でも攻撃に遭えば、組織が一丸となって復讐にやってくる。しかし下っ端が野放しというわけでもなく、勝手な真似をすれば上の人間は下の人間に暴力をふるい教育する。

この映画を見て面白いと思ったのは、一般的な企業やグループ、組織というもの以上に下っ端を制御することが難しいという点だ。幹部や頭、会長といった上層部は組織全体のことを考え目的を定め具体的な方針を検討するが、下っ端の人間は「血の気」が多く、喧嘩を売られたらすぐにでも戦争を起こして攻め入ることしか考えていない。主人公たちも初めは暴れることだけを考えていればよかったが、話が進んで出世していくにつれ、組織というものを意識せざるを得なくなってきた。

こうした感情的な下っ端をどう制していくのか、というところがこの映画の見所だった。幹部会が描いている構想、たとえばAとBが争いを手打ちにして戦争をやめるという計画は、下っ端同士のつまらない喧嘩で一瞬にして吹き飛んでしまう。初めはただ殴り合ってるだけのつもりが、いつのまにかエスカレートして銃で相手を殺してしまう。そうなるともう後には引けなくなる。

自分はどうして上の立場である主人公に感情移入してしまい、敵味方関係なく下っ端が感情的に突っ走って会全体の利益を損なってしまう様を見るのが面白くなかった。しかしこうしたアクシデントによってふたたび舞台が荒れ、どういった形で決着がつくのか分からなくなるということを考えれば、こうした演出があった方が良いと改めて思った。これらの演出はゲーム作りの参考になると思う。

下っ端を制するという管理職の苦悩ばかりでなく、同僚との対立、仲の良かった親友とのすれ違い、突っ走って失敗ばかりする下っ端自身の苦悩、同じ盃を交わした兄弟同士の避けられぬ対立など、広い目で見ると自分たちと同じような人間関係の悩みに苦しんでおり、良い結果も悪い結果もどれも人間らしいものだと思った。

これまで結構な数を見て来たが、どれも見ていて楽しめる内容だった。唯一不満な点は組織や人間が多すぎて、勢力図がよくわからなくなってしまうところだ。字幕があれば覚えやすいが映画に字幕がないようだ。映像を見ながら頑張って勢力図を覚えようと思う。