人生

やっていきましょう

スポーツ観戦をしていた時に近くの席に親子連れの観客がいた。子どもは小学校低学年くらいで、ゲームのルールを分かっていないようだった。子どもは親にあれこれ聞いたり、敵チームに素朴な罵声を浴びせるが、親はそのひとつひとつに対して真摯に向き合っていた。教えるべきところは教え、叱るべきところは叱り、褒めるところは褒めていた(そしてこの親自身過度な献身に疲労しているというわけでもなく、スポーツ観戦を心から楽しむという余裕があった)。

自分は何て完成された親だろうとしばらく心を奪われていた。子どもの言葉に対して「うるさい、黙って見ていろ」と言うこともできただろうし、邪魔だから放っておくこともできただろうし、一緒になって敵を罵ることもできたはずだが、この親はしなかった。子どもの味方となりガイドとなって、スポーツ観戦という娯楽の中でもちゃんとした教育をしている。

自分は誰の親でもなくまた親にすらなれない欠陥人間だが、親という役割をしっかりと果たしている人間は本当に成熟しているように思った。この子供がそのまままっすぐに育つかどうかは分からないが、少なくともこの親子には信頼関係が築かれるだろうということはわかった。