人生

やっていきましょう

Abemaで呪術廻戦の一期を全部見た。内容自体に不満はなかったが、あまりの若々しさに見ていて苦しくなった。アニメに対する嫌悪感はそれほどでもない。記憶が曖昧なので解像度は低い。

主人公の虎杖 悠仁は外向的で自分が苦手とするタイプの人間だが、自分の死に場所を探すという動機を持っている。これには個人的な興味を抱いた。両面宿儺の顕現を恐れいずれ虎杖を始末するという高専側の思惑もそうだが、物語が主人公の死に向かって進んでいくという構図はどこか異質で印象深い。

死といえばこの作品の登場人物が呆気なく死んでしまう。死が突然訪れる。奇跡は起こらない。悪役はそれを嘲笑う。理解を示さない。話して分かる相手ではない。躊躇いもなく見殺しにする。

その不条理の中で虎杖は自分の信念を貫き通す。自分を信じることができる。これが若さだと思った。少年誌というのは折れた人間の慰めのためにあるのではなく、今まさに何かのために戦っている若者を励ますためにあるように思う。

自分のような折れた人間には、未だ自分を投げ出さずにいる人間が面白くない。だから見ていて苦痛だったが、それだけの理由で切るのはどうかと思う。他にもまだ面白いところがある。

五条悟という存在がこの物語を決定的に異質なものにしている。デウスエクスマキナというか五条悟が出れば勝ちが確定するので、敵側(というか作品側)は五条悟をいかに介入させないかを考えることになる。

そのようなキャラクターが敵ではなく味方であるというのが異質だと思った。圧倒的強者をどう克服するかというのがよくある話の魅せ方だったが、この作品では味方にそれがいる。これ以上に心強いことはない。

この感覚には覚えがある。人間が神に抱く感情がそれだ。信者が麻原に、日本人が神風に、キリスト者がキリストに抱く感情。五条悟にも同じ感情を抱く。

自分が戦えるか分からない、失敗が怖いと感じる。しかし何も心配することはない。なぜならこちらには五条悟がいる。そう考えた時、口では言わないが誰もが勇気を感じている。