人生

やっていきましょう

17日目

筋トレ2日目。筋肉痛がひどいけれど前より痛みはない。はじめは休み休みやっていたのが、休まず10回は行けるようになった。この調子でどんどんいく。汗をかいたら昼飯食って、そのまま図書館に行った。図書館ではシオランの『悪しき造物主』を読んだ。シオランニヒリズムの大家でとにかく生には意味がないとか、自殺の話、空の思想の話をする。インターネットのbotを見て知ったのだけれど、反出生主義者や冷笑屋に結構人気がある。その理由はだいたいわかる。彼らの共通認識は現実はつらく苦しいというものだからだ。

彼の本を読んでいて興味深かったのは虚無と空の違いで、虚無というのは現実に対する失望や絶望を反映しているのだれど、空にはそれがない、つまり空とは絶望を取り除いた虚無だという話だ。空の思想はいかにも東洋的で、西洋のシオランからすれば、自文化のキリスト教を相対化しようとする彼の意図が伝わってくる。自分はこれを読んでいかにもと思った。ニヒリズムの克服は、まさにあらゆるものに意味がないと認めながらかつその絶望を乗り越えるというものだ。そんなもの簡単にいくわけがないが、うまくいけば大いなる財産となるだろう。しかし彼曰く、「そのときはもう、私たちはかつてのように『この世界』の者ではない」。

自分はふと考えた。自分の目指すべき方向はここなのか。確かに自分が目指している方向に近いことを語っている。しかし、そこまで自分はまだ現実に失望しきれていないのだ。若さゆえの楽観かもしれないが、シオランに比類する絶望を抱くにはあまりに自分は浅はかだ。まだ自分の可能性を捨てられない。でなければ誰が無意味な筋トレや映画鑑賞などするだろうか。

習慣づけをはじめて以来、自分の内面に湧いてくる気味の悪いポジティブさを感じている。すべてに意味はなく、あらゆる活動はすべて死に直結しているというのに、なぜ動き出そうと思えるのか。これは幸福という視野狭窄で短絡的で浅はかな思想に自分が流されている証拠だ。しかしそれを否定する理由もない。すべてに意味がないのであれば、不幸であることは幸福であることに等しく意味がないからだ。若いうちは幸福に流されやすく、可能性を感じやすいのであれば、それを手放しにしておいてもいいだろう。生存の必然として自分は勝手に歩きはじめている。しかしシオランと決別したわけじゃない。彼の思想にはまだまだ興味がある。もっと本を読んでみたいと思う。

帰ったらすこし虚しさが湧いてきたので、気分転換にゲームを始めた。長年やってきたオンラインゲームの新作だ。これが面白い。自分の家を作ることができ、その中で自由にブロックを配置することができる。言わばマイクラのパクリだが、オンラインということで自由に出入りできる。これがいい。

この日は友人が部屋の中にクイズゲームのマップを作ったというので参加してみた。○ブロックと×ブロックがあり、それぞれにテレポート用のポータルを配置する。近くには問題文があり、問題に正解すると先に進め、間違えるとはじめからやり直しになる。問題と問題の間をキャラクターは用意されたルートを走っていくのだが、途中で行き止まりになる。そこには問題文だけが書かれていて先に行く道がない。自分は立ち往生したが、よくみると僅か数ミリ程度の薄い柵に使われていた木の丸太の上を歩くことができ、これを落ちないようにどんどん行くとずっと向こうに○×ブロックがある。ここまで長かったので問題文を忘れてしまった。してやられたと思った。自分は運悪く間違いを選んでしまい、はじめからやり直すことになった。

このクイズマップは鍵がかけられていて、スタートの合図と共にパスワードが公開されて一斉に開かれた。はじめはあんまり来ないだろうなと思っていたらどんどん人が湧いてきた。みんなで競い合った。自分は10位かそこらだった。このクイズレースは面白いと思った。何せ自分で作ることができるからだ。

別の友人は何やら奇妙なマップを作っていた。地上に1×1のマス目を10×10くらいに敷き詰めそれぞれを区切り、そのはるか上空に3×3の床を浮かせその床の上にボールを置いた。これでカジノをやるのだという。床に置いたボールを殴り飛ばし赤に入るか黒にはいるかというものだ。ルーレットと同じ要領だ。これには驚いたけれど問題があった。ボールを観測するプレイヤーごとに結果が変わるのである。例えば自分の画面では(5,1)の赤に入っているのに、別の友人の画面では(4,2)の黒に入っているという。これに気づいたのがカジノを開く前でよかった。もしこのままやったらカジノは大荒れしただろう。まるで二重スリット実験だ。そもそもボールはこういうカジノの用途に作られたものではない。浮かせて遊ぶ単なるおもちゃだ。だから手を抜いたんだろう。しかし運営としてはこの問題を対処してほしいと思う。当分の間、友人はこの対策としてtwitchでの配信を考えているらしい。

自分が落ち込んでいたことなどすっかり忘れてこのゲームの虜になった。自分にイベントが作れるというのが楽しいのだ。サイコロやカード要素もあるので、やろうと思えばすごろくや人生ゲーム、モノポリーTRPGなどなんでもできる。遊びの可能性があり、自分でそういうのを企画したいと思った。実は前作のオンラインでよくイベントを開いていた。最近ようやく気づいたが、自分はイベントがやりたい人間なのだ。だから夢中になり、この日は朝の4時まで起きてしまった。風呂にも入り忘れた。最悪だ。明日からはちゃんと習慣をつけられるようにしたい。