人生

やっていきましょう

765日目

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を観た。丁度映画の最終公開日だったので直接映画館へ見に行った。ファンでずっと追っていたというわけではなかったが、新劇場版は3作観ていたので大体の流れは掴んでいた。

話の内容はQよりもずっと分かりやすい話だった(Qがなぜ分かりにくかったのかというと、破とQの間の「空白の14年間」についての描写がまったく存在しない上、話の方向が曖昧だからだ)。しかしそれは大筋の話で、細部は相変わらず専門用語だらけで理解できない部分があった。

多くの人が指摘するように、エヴァンゲリオンは他人と自分が関わることへの恐怖、不安と言ったものがテーマであるように思う。自分は観てないが、話を聞く限り旧劇場版やアニメの方はその問題意識と正面から向き合い、分かり合えないことへの苦しみが描かれていたようである(観てないので一度確認する必要がある)。

しかし今作は主人公を含め多くの人間が分かり合えている。そして自らの内面と折り合いをつけ、自他の適切な距離を見出せている。主人公は初め数々の失敗から完全に心が折れ自分の内面に閉じこもっていたが、第三村での人々の交流で徐々に信頼を取り戻し、最後には自らの意志でエヴァに乗るという役割を引き受ける。この映画はそうした成長の物語であり、だから話の筋が追いやすく観ていて分かりやすかった(何十年も追っていたコアなファンにの中にはこの話の分かりやすさ、とりわけ人と人とが簡単に分かり合えていることに不満を持っていた人もいたようだが)。

映像には満足できた。何度も同じことを言っているが、自分が知らない間にアニメのCG表現が格段に進化していたことに驚いた。特に終盤の敵が群れで襲ってくるシーンには今まで見たことのないようなCG技術が使われていて、その滑らかな動きに驚嘆した。自分はストーリーばかりに意識を向けていたが、映像表現を純粋に味わうという楽しみ方もあって良いと思った。音楽も良いものが多く、帰ってYouTubeで聴き直したりなどした。

自分はそれほどエヴァンゲリオンを観ていないので深い考察をすることはできないが、全体的な感想を言うならばやはり自他の距離感という自らの根本的な問題を扱ってくれたこの作品には親しみを抱いた。しかし主人公が自他の適切な距離感を見出し、最後には互いに分かり合えるようになったという演出は、そうあることのできない自分(あるいは同種の人間)が何の救いも与えられず置いていかれたようにも思えた(最後のシーンはやはり観ていて苦しいものがあった)。長期に渡る途方もない物語に折り合いをつけて終わらせるにはやはりそうする他ないのだが、人との信頼や相互理解を描く多くの作品同様、やはり自分はどこか諦めのような感覚を味わされた(しかし作品としては楽しめたので不満はない)。

今回の作品に何か直接的なインスピレーションを受けたわけではなかったが、自分の創作に何か活かせるアイデアがありそうな気がした。一度映画を振り返って少し考えてみたい。