人生

やっていきましょう

1273日目

ワールドカップが終わり虚脱感に襲われた。自分は何をしているのか。どこに向かっているのか。何の意味があるのか。あれこれ考えて不安に陥った。

数年前の自分は確かこんなことを言っていた。不安に陥るのは意識の焦点を失うからだ。何かに集中できるものがあれば不安は軽減される。目的を持った作業であると好ましい。自分にとってワールドカップはそんな対象だった。

ワールドカップといえば自分にとっては『最強伝説黒沢』である。このことを何度も繰り返して言っているが、実は今回のワールドカップに関してはあまりそんな気分にならなかった。他人の人生を見て何が楽しいのか。自分の人生に何の影響があるのか。選手は全員スポンサーからの多額の給料を得ていて、自分は文無しである。と、普通であればつまらない考えが湧いてくるが今回は違った。当初予選リーグ落ちと言われていた日本のドイツ、スペイン戦での活躍、全大会2位のクロアチアに対して引き分けて終わるという展開。日本以外にもクロアチアがブラジルに勝ち、モロッコがスペイン、ポルトガルに勝つなど波乱の展開が多く、純粋にゲームとして楽しめるものが多かった。

とりわけ一番面白いと思ったのは決勝戦だった。フランスVSアルゼンチンは素人の自分が見てもとてもいい試合だった。前半はフランスが不調でアルゼンチンが2点先取し、消化試合を見るつもりでぼんやり眺めていたが、後半に入ってフランスが2点追い上げる。これで試合は延長戦に入る。前半アルゼンチンが1点を入れて今度こそ決まったと思ったが、後半に入りフランスが1点取り返す。これで3-3。試合はPKに持ち込まれた。

最終的に試合を征したのはアルゼンチンだった。Twitterブエノスアイレスの映像をみると「世界で一番広い道路」と言われている7月9日大通りのオベリスコ周辺が民衆で埋め尽くされていた。はじめはCG映像かと思ったがそうでもないらしい。コロナ禍でありながらこれほどの人数が集まるということは驚くべきことである。

サッカーは人の熱量がどれほどの力を持っているかということを教えてくれる。数千数万人単位の人間がボールを蹴り合っている姿を見て騒いだり喚いたりしている。ただそれだけを見ればつまらないかもしれないが、実際に歓声を聞き、その盛り上がりを肌で感じれば、少なくともその影響の強さを知ることができる。

人は神から遠ざかるほどに宗教的になるというのは誰の言葉だったか。信念がなく、生きる意味を失い、随分と長い間途方に暮れている自分にとって、この種の盛り上がりには神秘を感じる。冷笑は容易いが、何かを信じる人間が集まるというのはこれだけの影響力があるのだということを痛感させられた。

明日から再び生きる意味を失った。とりあえず創作でも再開しようと思う。