人生

やっていきましょう

第四章の進捗は順調だ。度重なる修正の結果、前半部は伏線を含めほぼ完成したと言っていい。全体を通して不満もない。

今日から後半部の修正に入る。ここでの課題はどのように分散した物語をひとつに収束させるかということだった。第四章はいわゆる群像劇であり、基本的に主人公目線で話が進んでいるが、様々な勢力が様々な目的を持って互いに関与し合っている。その中には当然主人公が倒すべき敵勢力もいれば、味方になる勢力もいる。

主人公たちはひとつの舞台の中の対立構造に外からやってきた部外者で、本来的にはここで起こる事件とはあまり関係がない。したがってここで考えなければならないことは「主人公たちの目的」と「諸勢力の目的」を分けて考えることだ。主人公たちの目的とは当然特定の敵勢力の排除である。しかし諸勢力の目的は主人公たちの排除ではなく、広い意味でこの国の覇権を誰が握るか、ということである。ある勢力はこの国を支配しているが、別の勢力は彼らの打倒を画策している。また別の勢力は国のシステムに適応する形で宗教的な支配を画策しているし、別の勢力は国民がいま依存しているものに着目して財を成そうとしている(すなわち経済的な支配だ)。彼らがそれぞれの目的を達成しようとする中で、勢力が互いに対立したり協力したりしている。

こうした様々な思惑をどのようにひとつのゴールにまとめるか、ということにこの1年を費やしてきた。何度も描いては描きなおしてきたが、ついに数週間前に大まかなストーリーラインが確定した。今自分は手元にあるメモを見ている。おそらくこのメモの通りに作れば話がうまくまとまるはずである。

注意すべきことは、必ずしも互いが互いに関与する必要がないということだ。主人公たちは主人公たちの目的達成に関わる範囲で、別の勢力は別の勢力の目的達成に関わる範囲で完結してもよいと考える。そしてメインは主人公なのだから、実際のところ他の部分はそこまで入れ込んで作らなくてもいい。ここで適度に手を抜かなければ、完成はあと数年遅れるだろう。

今日自分が取り掛かったシーンは、ある敵対的キャラクターを味方に引き入れるシーンだった。以前何度も書いてきたが、このキャラクターの描き方には問題があった。はじめは主人公たちを始末しようと考えていたが、主人公たちが倒すべき敵勢力に裏切られ、それから共闘するという流れにしようと考えていた。

問題はなにか。このキャラクターの行動原理が曖昧だったということだ。なぜ主人公と敵対しているのか、なぜ主人公たちを襲う必要があったのか。それなのになぜ簡単に改心しようとしたのか。主人公たちが自分たちを襲った敵をわざわざ味方に引き入れる理由は何か。

こうしたことを考えると、共闘というストーリーには無理があるように思えてくる。それでストーリー全体を見直して、このキャラクターの位置づけをはっきりさせるようにした。

まずこのキャラクターを味方にするという方針を諦めた。あくまでも敵対的であり、合流する際にはしぶしぶ協力させられるという体で話を進めた。このキャラクターの敵対的理由は組織間の対立理由に準ずる。主人公たちの属する勢力とこのキャラクターの属する勢力間で利害が衝突し、そこで対立することとなった。それが理由である。

後半部に入っても、このキャラクターを改心させなかった。あくまでも敵対的なキャラクターとして立ちはだかる。ゲームではとある裏切りをうけて主人公と同じ房に入る。その時でさえ、このキャラクターは敵対的である。しかし主人公にとって有益な情報やコネを持っている。そこで一時的に協力するという形で一貫した。

このような設定を考えているうちに、このキャラクターの目指すべき性格が見えてきた。野心家で自己中心的。しかし金には弱い。平気で嘘をつく。裏切る。優勢だと調子に乗る。劣勢だと自分だけでも助かろうとする。実は臆病。要は小物である。

これまでこの人物を小物として描くことには慎重だった。しかしやはり小物として描いた方がいいという結論に至った。頼れる味方としてではなく小物であることこそが、ストーリーに適度な緊張感を生む。はじめはみんなで協力して巨悪を倒すという展開にしようとしていたが、こっちの方がずっといいと思った。

もう一人重要な人物がいた。こちらは主人公のパーティとして仲間になる主要キャラクターだ。しかしこのキャラクターがなぜこちらの味方になるのか、そもそもこのキャラクターは何者なのかという設定があまり深く練られていなかった。そのためよく分からない人物になってしまった。

このキャラクターを説明するために上記の区分け、すなわち「主人公の目的」と「諸勢力の目的」を分けて考えるということが役に立った。諸勢力の問題は第四章で完結していなければならないが、主人公の目的は序章から続くストーリー全体の目的に適うものでなければならない。今回このキャラクターは以前の章から関与していたにもかかわらず、第四章では諸勢力の一員としてしか描かれてこなかった。そこが問題だった。

そこで自分は次のようにした。このキャラクターははじめ諸勢力の一人として主人公たちとは敵対しているが、実はこれまで主人公たちと同様、ラスボスの情報を探るために世界各地を回っており、最終的に目指すべき目的が合致していることが分かったので協力するという形にした。

すなわちこのキャラクターは物語を経るにつれ対立から協力へとシフトしていくという描き方がされる。この変遷をどう描くべきか。実はこの部分の描き方は6.7年前から構想があった。物語としてもそれが妥当だろうと思うので、そのアイデアをそのまま採用することにした。

更にあと3人、物語に組み込まなければならないキャラクターがいる。これについてはまた話が長くなるので、次の記事でまとめたいと思う。