人生

やっていきましょう

以前の話になるが、家族の車に乗っていた時、話をしていたら突然バイクが信号無視をして横切ってきた。運転席にいた家族は急ブレーキを踏んで何とか衝突を避けた。あまりに危ない運転だったのでしばらく動揺していた。

この状態で運転させるのは危ないと思い「とにかく冷静になって、一旦近くのコンビニに止めよう」といったことを提案した。自分は善意のつもりで言ったのだが、冷静になれとはどういうことか、飛び出してきたのは向こうじゃないかと怒ってきた。

この時言葉の難しさを実感した。自分は第三者の視点から危険な状況にあると判断し、心の冷静さを取り戻させるために停車することを提案した。しかしこの「冷静」という言葉には、どこか言われる方に非があるというニュアンスが含まれるらしい。

実はこのニュアンスに自覚的だった。はじめ自分は「落ち着いて」という言葉を言おうとしたが、落ち着けというのは危ない思いをした運転手にはどこか配慮に欠ける言葉だと思っていた。そこであまり文脈に依存しない標準的な言葉である「冷静」を使ったつもりだったが「落ち着いて」と同じニュアンスで捉えられてしまった。自分も後から考えてみて、言われる身になってみれば確かに似たような印象を抱くだろうなと思った。

この時自分が使うべきだった表現は何だったかと考える。先ほどの危険回避の意図を伝えつつも、トラブルの被害者に対する感情を配慮した表現というのは何か。本人に聞いたところ「少し休もう」みたいな言葉が妥当だということだった。なるほどと思ったが他にもあるだろうか。

敢えて意図を伝えず、ちょっとコンビニに行こうと言うだけでも良かったかもしれない。あるいは気分転換になるような音楽をかけてもよかったかもしれない。自分はこうした配慮を意識することが苦手だ。どうしても状況への対処の方ばかりを考えてしまうが、そればかりでは人間関係はうまくいかないだろう。